ディジー・ガレスビー(tp)、ロイ・エルドリッジ(tp)、サン・ラ(p,band
leader)の3人が選出されて始まったNEAジャズ・マスター賞だが、2004年にはパフォーマーだけでなく、評論、プロモーター、エンジニアらにも授与され、またヨーロッパ出身のダン・モーゲンスターン(元ダウンビート誌編集長)や、日本人の穐吉敏子(p,arr)ら、アメリカ以外の地域の出身者も顕彰され、規模が拡大してきた。今までは、秋に次年度受賞者の発表があり、翌年1月のIAJE(国際ジャズ教育者会議)年次総会の3日目にパネル・ディスカッション、フォト・セッションそして夜には、メイン・ホールで盛大なセレモニー&記念コンサートというのが定例だった。2009年度は、IAJEの倒産により1月の年次総会がキャンセルされたために、ジャズ・アット・リンカーン・センターと提携して、その旗艦ホールである、ローズ・シアターで、ウィントン・マーサリス(tp)率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラのサポートで、よりグレード・アップして開催された。

リー・コニッツ(as)
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Dr. トゥーツ・シールマンス(左、hca,g)と Dr. ビリー・テイラー(p)
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2009年度は、ジョージ・ベンソン(g,vo)、ジミー・コブ(ds)、リー・コニッツ(as)、Dr.
トゥーツ・シールマンス(hca,g)、スヌーキー・ヤング(tp)らがパフォーマー/教育者枠に、技術者枠で、録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーと6人のジャズ・マスターが誕生した。
セレモニーはまず、歴代ジャズ・マスターの入場で始まる。物故者とも含めると100人のジャズ・マスターの中で18人が出席し、万雷の拍手と共に登場する。ロイ・ヘインズ(ds)、ランディ・ウェストン(p)、バリー・ハリス(p)らが、矍鑠とした笑顔で、聴衆に応えていた。さらにヴォルテージがあがり、新ジャズ・マスターズの入場だ。着席と共に、鉄壁のアンサンブルを誇るジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラのファンファーレ、NEA代表のダナ・ギオイアと、数十年後には確実にジャズ・マスターに選出されるであろうウィントン・マーサリスによって、2009年度のNEAジャズ・マスターズ・アワーズ・セレモニー&コンサートの開会が宣言された。
2009 NEA Jazz Masters Award Ceremony & Concert
"Un Poco
Loco"
Jazz at Lincoln Center Orchestra
NEA Jazz Masters Procession
Welcome from NEA Chairman Dana
Gioia and Wynton
Marsalis
George Benson
Award presenter : NEA Jazz Master Tom
McIntosh
James"Jimmy" Cobb
Award Presenter : NEA Jazz Master Roy
Haynes
"Stella
by Starlight"
with George Benson
Jazz at Lincoln Center Orchestra
"Can You
Read My Mind"
with Jimmy Cobb Quartet
Lee Konitz
Award presenter : NEA Jazz Master Phil
Woods
Jean-Baptiste " Toots" Thielmans
Award presenter : NEA Jazz Master Dr.
Billy Taylor
"What a
Wonderful World"
With Toots Thielmans
"Body and
Soul" with
Lee Konitz
Jazz at Lincoln Center Orchestra
Rudy Van Gelder
Award presenter : A.B. Spellman
Edward Eugene "Snooky" Young
Award Presenter : NEA Jazz Master Franl
Wess and Gerald
Wilson
"Stolen
Moments"
for Rudy Van Gelder
"Lil Darlin"
with Tom McIntosh and Candido Camero
Jazz at Lincoln Center Orchestra
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ジョージ・ベンソン(g,vo)
1949年当時、時代を20年は先取りしていたマイルスの奇跡のアルバム「クールの誕生」にも参加し、そのソフトなトーンで、ストレート・アヘッドからアヴァンギャルドと広い守備範囲を誇ったリー・コニッツ(as)や、ジャズのみならず、「ブルーセット」、「セサミ・ストリートのテーマ」の作曲者としても広く知られら、ヨーロッパ出身では2人目のジャズ・マスター、Dr.
トウーツ・シールマンス(hca,g)も円熟のパフォーマンスを聴かせてくれた。 レコーディング・エンジニアで初受賞となったルディ・ヴァン・ゲルダーは、現在もニュージャージー州イングルウッド・クリフスの自宅スタジオで、精力的に録音を続けている。そのスタジオは、ブルーノートの諸名作、コルトレーンのインパルス盤、CTI
など数々の名盤が生み出されたジャズの聖地である。自らが40年、50年前にアナログで録音した諸作のデジタル・リマスターCD制作により、ジャズ・レコーディング・サウンドのスタンダードを創りあげた、ヴァン・ゲルダーの業績が再評価されての受賞と思われる。
トリを飾ったのは、今回のジャズ・マスターズの中でも最長老で1919年に生まれた、スヌーキー・ヤング(tp)だ。ビッグバンド全盛の40年代から活動を開始し、テレビ全盛時代には30年にわたって、人気番組「トゥナイト・ショウ」のハウス・オーケストラのメンバーを務めた。ビッグバンド黄金時代からの盟友ジェラルド・ウィルソン(tp.arr)とフランク・ウェス(ts,fl)によって、記念盾が手渡された。
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会場が暗くなり、ジョージ・ベンソン(g,vo)のヴィデオが流れた。ウェス・モンゴメリー(g)の後継者としてキャリアをスタートし、70年代からはスムース・ジャズ・ギタリスト、R&Bシンガーとしても輝かしい実績を積んでいるマルチ・アーティストとして紹介された。トム・マッキントッシュ(tb)によるスピーチ、記念盾の授与、そして返礼のベンソンのスピーチでは、自分を音楽の道へ誘ってくれた継父への感謝を述べる。ここまでは例年通りの進行だが、今年はさらに大きなボーナスがあった。ジョージ・ベンソンとジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラの夢の競演である。黄金色のイヴァニーズ・ジョージ・ベンソン・モデルを携えて、「ステラ・バイ・スターライト」でスウィングした。
ダイナ・ワシントン(vo)やサラ・ヴォーン(vo,p)らシンガーのサポート、今年で制作50周年を迎えるジャス史上最高のベスト・セラー・アルバム、マイルス・デイヴィス(tp)の「カインド・オブ・ブルー」の唯一の生存するレコーディング・メンバー、そしてウェス・モンゴメリー(g)との活躍と、名バイ・プレイヤーとして存在感を放ってきたジミー・コブ(ds)も、衰えを知らないその繊細なドラム・ワークを披露する。

ジミー・コブ(ds)
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オリンピックのメダリストのように、ハモニカにキスをするDr.トゥーツ

リー・コニッツ(中央、as)
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レコーディング・エンジニアで初受賞となったルディ・ヴァン・ゲルダー

左からジェラルド・ウィルソン(tp)、スヌーキー・ヤング(tp)、フランク・ウェス(ts,
fl)
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オーケストラでも最若手のダン・ニマー(p)らにも、
ヴェテランとの貴重な共演となる。
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